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学生の重視度と理解度のギャップに注目した内定辞退防止策

今回は「就活生が入社先企業を選ぶ際に重視した情報」と入社予定先企業に関するそれらの情報を就活生自身が「どれくらい理解していると感じているか」とを比較してみました。この2つを比較する趣旨は、もし「重視度が高いのに理解度が低い」という情報があれば、その点に関して情報提供を積極的に行って自社の魅力を伝えていけばアピール効果が高く、内定辞退防止策としても役立つと考えられるからです。

比較に使ったのは株式会社マイナビが就活生に対して毎年実施している「マイナビ学生就職モニター調査 8月の活動状況」です。2017年卒から2019年卒までの3年分で比較してみました。この調査では、就活生が入社先企業を選ぶ際に重視した情報を「上位3つまで」と「最も重視したもの」の2通りで聞いています。一方、入社予定先企業についてそれらの情報をどの程度理解しているかを5段階で答えてもらっています。

この中で、入社先企業を選ぶ際に「最も重視した情報」として毎年ほぼトップ3にランクされている3項目を見てみると「給与や福利厚生などの待遇面の情報」と「勤務地に関する情報」の2点はわかりやすいこともあって理解度も高くなっていますが、もうひとつの「具体的な業務内容」に関しては理解度の低さが目立ちます。2017年卒こそ重視度が1位だったのに対して理解度は5位でしたが、これが2018年卒では重視度2位に対して理解度が11位と大きく乖離しています。2019年卒では重視度2位に対して理解度は7位とやや改善されましたがそれでも重視度と理解度にはかなりのギャップが見られます。

また重視度をトップ10まで広げてみると「社内の人間関係に関する情報」についてギャップが目立ちます。重視度は2017年卒以降7位、8位、7位となっているのに対して、理解度はそれぞれ15位、16位、13位と重視度よりもかなり低くなっています。

重視度と理解度にギャップのある情報の活用


こうした状況を見ると「具体的な業務内容」と「社内の人間関係」に関する情報ついては、自社のアピールをしながら理解度を高めることができれば、自社の魅力を印象づける効果が期待でき、内定辞退防止にも役立つと考えられます。

具体的な業務内容については、部門や職種で内容が異なり、就活生の興味関心にもバラツキが出ることが理解度を低くしている原因だと考えられます。

そこで、先ずはインターンシップや企業説明会の中で職種別にグループ分けをして説明をする機会を設け、その中で業務内容や魅力に関する概要の理解を進めます。その上で面接期間中に選考対象が絞られてくる中で、個々の応募者の興味・関心に応じてより深く業務内容や魅力を伝えていくという2段階での対応が考えられます。その際にそれ以外の部分のアピールも含めてリクルーターをうまく活用できればいっそう効果的です。

また「社内の人間関係に関する情報」は外部の人に伝えることがそもそも難しい情報ですが、それゆえに工夫をして就活生に「人間関係が良い」と感じてもらえれば他社と効果的な差別化ができやすい情報でもあります。

では就活生が「社内の人間関係が良い」と感じるのは具体的にどういう会社か考えてみましょう。

・先輩や上司の面倒見が良い会社
 就活生に対する意識調査結果を見ると、内定後に半数以上が入社先企業に対する「不安」を感じており、その理由でダントツに多いのが「この会社できちんと勤まるかどうか」という点です。こうした調査結果から考えると、就活生にとって「気軽に相談できる先輩や上司のいる会社」は人間関係が良いというイメージと重なりやすいと考えられます。

こうした点を就活生に伝えられる機会は「先輩社員と交流する場」であり、そこでの先輩社員の発言はリアリティが感じられやすいため影響が大きいと言えます。企業説明会の中での先輩社員との質疑応答だったり、OB訪問や先輩社員との面談の機会などで、担当する先輩社員が話の流れの中で自然な形で「気軽に上司や先輩社員と相談できる」という状況を伝えることで効果が期待できます。

・社員を尊重してくれる会社
 就活生が会社の人間関係の良し悪しをイメージする上で「会社の社員に対する姿勢」のようなものも影響があります。社員を尊重する姿勢が感じられる会社に対しては「人間関係も良さそう」という印象を抱きやすいと思われます。従って、採用活動の様々な場面で「就活生の立場に配慮してくれている」と感じてもらえれば、入社後も社員を尊重する企業風土のある会社だという印象を与えることが期待できます。

そのためには、たとえば「面接日程の設定」や「入社承諾書の提出」などにおいて、会社の都合だけでなく「就活生の都合」にも配慮するといったことが挙げられます。また面接の場であれば、学生を評価するための質問に終始するのではなく、学生が知りたい点にも誠実に答えてあげる機会を持つことで「会社と学生が互いを理解しあった上で採用・入社の判断ができるように配慮している」といった印象を与えることができます。

こうしたことは面接の場だけに限りません。面接の後に個別に「面接フォロー面談」を実施する場合、面接では聞き難かった本音の質問を聞き出してあげて、それに対して誠実に答えてあげたり、面接の中で気になった点をアドバイスしてあげるといったことなども効果が期待できます。

・明るい雰囲気の会社
 職場の雰囲気が明るい会社も「人間関係の良さ」をイメージさせやすいと言えます。ただ、職場見学で「明るい職場」を就活生に実感してもらうのは通常は困難です。そこで「簡単に明るい会社を印象づける方法」として考えられるのが「挨拶」です。

会社で就活生を見たら笑顔で「こんにちは」と挨拶するように社員に励行してもらうのです。会社で会うほとんどの社員から笑顔で挨拶されたら、学生さんは間違いなく良い印象を受けますし「明るい職場」だと感じるでしょう。ただ気を付ける点としては、必ず「笑顔」で挨拶することです。社員から挨拶されても、それが「義務づけられてやっている」と感じられてしまったら逆効果になりかねません。あくまでも「笑顔」を忘れないことが重要です。

ここまで就活生が入社先企業を選ぶ際に重視する情報とその理解度にギャップのある情報について見てきましたが、いかがだったでしょうか。当然、重視度の高い情報に対しては学生も理解しようと努力しますので理解度も高くなる傾向にありまが、中には上記のように明確なギャップが見られる情報もあります。

企業間の内定者争奪戦が激しさを増している中で、内定辞退を防止して新卒採用の勝者となるためには、他社が見落としている僅かな「スキ」も見逃さずに活用していくことが必要な時代になっています。ぜひ、今回のような「僅かなスキ」にも目を向けて、内定競合する他社との内定者獲得競争に活用してみていただければと思います。

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