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「日本型雇用」見直し論と新卒採用のゆくえ

経団連の就活ルール廃止宣言以降、経済界では「日本型雇用」に対する見直し論が盛んになってきました。就活ルール廃止宣言に先立つ昨年9月の中西経団連会長の会見でも「終身雇用、新卒一括採用をはじめとするこれまでのやり方では成り立たなくなっていると感じている」との発言がありました。

今年に入っても5月には、日本自動車工業会の豊田会長が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」という認識を示し、経済同友会の櫻田代表幹事も、新卒一括採用、終身雇用、年功序列などから成る「パッケージとしての日本型雇用」を見直していくべきだと発言しています。

こうした一連の発言から、「日本型雇用」の見直し論が今後の新卒採用にどのような影響を及ぼしていくのか考えてみましょう。

日本型雇用の特徴


日本型雇用の特徴は、定年までの終身雇用制と年功的処遇による安心感によって企業に対する社員の「献身」を生み出す点にあったと言えます。そうしたしくみの効果を高めるため日本企業は「社宅」や「福利厚生施設」、「社歌」や「社員旅行」など「組織への帰属意識」を高めるための様々な施策を導入してきました。

そうした中で「新卒者」は他社を経験していないため「就社」意識を醸成しやすく、入社後の「ゼロから育てる社員教育」も会社への帰属意識を高めるのに役立ちました。新卒採用は組織への献身を生み出すのに都合の良い人材獲得の手段だったと言えます。

しかし一方で、人材を新卒から定年まで抱え込む日本的雇用は「高人件費型経営」を強いることになります。企業を取り巻くグローバルな経営環境が「献身」だけでは企業間競争に勝てない状況へと変化し、さらにバブル経済も崩壊すると大企業といえども高コスト体質に耐えられなくなり、日本型雇用は強みを失っただけでなく維持することも困難な状況となりました。

日本型雇用の崩壊と新卒採用


バブル崩壊後は大企業でもリストラが当たり前に行われるようになり、給与体系でも成果主義が普及し、新卒採用だけでなくキャリア採用も増えて、新卒者の意識も「転職も当たり前の選択肢」へと変わってきました。こうした実態から、既に日本型雇用は過去のもという実感を持っている方も多いのではないかと思われます。

ただ、その中で「新卒一括採用」は今日まで維持され続けてきました。それはなぜでしょう。

新卒一括採用は、上記のように「就社意識」を生み出しやすく、それに「同期入社」という人的なつながりが加わることで企業への愛着心はキャリア採用よりも高まると言えます。そうした意識は終身雇用制がなくても長期勤続の傾向を生み、企業にとっては採用コストの抑制や組織の円滑な運営といったメリットをもたらします。

また「ポテンシャルが高く、ある程度以上優秀な若い人材を大量に採用できる」という点も新卒一括採用のメリットだと言えます。新卒でそうした人材を年間100人以上採用している企業は珍しくありませんが、キャリア採用では簡単ではありません。充実した新入社員教育制度を持っている大企業にとっては新卒者でも比較的短期間で戦力に育成可能です。

新卒一括採用にはこうしたメリットがあり、それが日本型雇用の実質的な崩壊後も続けられてきた主な理由だと考えられます。では、今後も今までと同様に続けられていくのでしょうか。

新卒採用の今後


経団連が大学側と共同で推進する「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は「新卒一括採用にジョブ型採用も加えた複線的で多様な採用形態」への移行を提言しており、経済同友会の櫻田代表幹事は「通年採用が前提にあり、キャリア採用を中心として、その一つに新卒採用があるべきだ」と発言しています。

これらを見る限り、経済界としては新卒一括採用を縮小していこうという意図があるようにも見えます。しかし、新卒採用中心から「キャリア採用中心」に移行させるのは現実味が薄いと思われます。

新卒一括採用を縮小することは、卒業しても企業に正社員として入社できない「就職浪人」を多数生み出すことになります。経済同友会の櫻田代表幹事も会見で、日本では新卒者の8割超が卒業と同時に就職できているのに対して、キャリア採用中心のアメリカでは新卒者の5割程度しか就職できないと述べています。

しかし、多くの大学にとって今や就職率は応募者獲得の「生命線」ともなっており「新卒者の5割しか就職できない」という状況は大学側には決して容認できないでしょう。経団連は大学側と二人三脚で「これからの日本に必要な人材」を育成する方針である以上、大学側のそうした意向を無視することはできないでしょうから、経団連が新卒採用の縮小に向かうことは考えにくいと言えます。

さらに新卒者の5割程度しか就職できなくなると社会的にも深刻な状況をもたらします。卒業時点で就職できなかった新卒者は、派遣やアルバイトといった、いわゆる「非正規雇用」の道を選ばざるを得なくなります。いくら「キャリア採用中心に移行する」と言っても、キャリア採用では即戦力が求められるため非正規雇用で十分なスキルを身に付けられない多くの既卒者にはキャリア採用の道も閉ざされてしまいます。

新卒採用が縮小されてしまうと、非正規雇用としてビジネススキルを習得できない若者が恒常的に生み出されていき、その結果「スキルを有する人材の転職市場」も十分形成されず、企業にとっても「キャリア採用をしたくてもできない」という状況が生まれてしまいます。

日本経済新聞の記事によれば、1993~2004年の就職氷河期の新卒者のうち、2018年現在で専業主婦を除く「無業者」は40万人に達すると言います。そうした中には新卒後にアルバイトや仕事を転々として能力開発の機会が少なかった人が多いとのことです。このことは新卒時に就業機会を確保することの重要性を物語っています。

さらに非正規雇用の拡大は経済的な格差を広げることを意味します。経済的な格差の拡大が虐待や犯罪など社会的な不安を高めてしまうことは現状を見ても明らかでしょう。

このように、新卒採用縮小の悪影響は容易に予想できることからも、経済界がそうした方向に舵を切ることは考えにくいと思われます。日本型雇用の見直し論は盛んですが、新卒採用に及ぼす影響としては、新卒採用の規模的縮小ではなく、経団連が産学協議会を通じて提案しているような「質的」な変化だと考えるのが合理的だと思われます。

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