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内定辞退防止策|新就活ルール時代の“面接意識改革”

新卒の就活ルールは、政府が当面は従来の経団連主導ルールを踏襲する方針を発表したことで一見これまでと大きな変化は無いようにも見えます。しかし実際には、日本の新卒採用市場は新たな時代を迎えており、経団連が就活ルールの旗振り役から降りたことが、そうした変化を象徴していると言えます。

経団連が就活ルール作りを止めたのは、新卒市場での人材獲得競争における危機感の表れだと考えられます。「危機感」とは、今や大企業だからといってそれだけで優秀な学生を採用できる時代ではなくなってきたという危機感です。

学生に対する意識調査結果を見ると根強い「安定性志向」がうかがえます。しかし以前このコラムでも見たように必ずしも学生の意識は「大企業=安心感」ではなくなってきていると言えます(2018年10月11日付けコラム「就活生が重視する入社決定要素の変遷が意味するもの」ご参照)。

マイナビ学生就職モニター調査の「入社先企業を選択する際に最も重視したポイント」に関する回答で、2016年卒では1位だった「経営の安定性」が2019年卒では5位に落ちている一方「自分が成長できる環境」が4位から1位になっていることが、そうした就活生の意識を如実に表していると言えるでしょう。

つまり「安心感」や「安定性」を、大企業に「就社」することからビジネス社会における自らの「市場価値」を高めることだと考えるようになってきたという意識の変化です。こうした変化への対応を怠っていると内定辞退者の増加という「新卒採用市場の思わぬしっぺ返し」を食いかねません。

しかもこうした学生の意識変化への対応は、売手市場の時期にだけ必要になるものではありません。たとえ「買い手市場」の環境に変っても、優秀な学生に対しては常に激しい人材獲得競争が存在します。従って今後は日本を代表するような大企業でも、内定辞退防止のためには常にこうした意識の変化に対応していく必要があると言えます。そして、こうした新時代の新卒採用に備えて先ず取り組む必要があるのが「面接」の見直しです。

新就活ルール時代の「面接」とは


株式会社マイナビによる就活生の意識調査では、入社予定先企業に「入社したいと最初に強く感じたタイミング」は「面接期間中」が最多となっています。また、以前このコラムでも見たように、面接官とのやりとりの中で「ぜひこの会社に入社したい」と思った経験のある就活生は、2019年卒では前年よりも20ポイント以上増加して67%に達しています(「内定辞退防止効果を意識した面接の広がり」 ご参照)。

一方、新卒採用で売手市場が続く中でさすがにかつて見られたような「圧迫面接」こそ影を潜めましたが、未だに面接は「企業が就活生を選ぶ場」であるという意識の面接官が大半ではないでしょうか。しかし上記のように、面接は就活生の志望意欲に大きな影響を与えるものになっており、面接は企業が就活生を一方的に選ぶ場から「企業と就活生が双方を選ぶ場」へと変わってきているのです。

では内定辞退防止につながるような「就活生に選ばれる面接」にするにはどこを見直せば良いのでしょうか。そのヒントも就活生の意識調査の中にあります。上記の意識調査の中で就活生が「面接で志望度が上がった理由」として挙げている主な要因は以下の通りです。

1位:話をしっかり聞いてくれた
2位:リラックスできる環境を整えてくれた
3位:自分の考えを受け入れてもらったと感じた
4位:一人に対して長い時間をかけてくれた
5位:自分の長所についてしっかり引き出してもらえたと感じた

どうでしょう。どれも決して難しいことのようには思えません。質問への回答に「なるほど」と思えるところがあったらその都度うなずいてあげるだけで「話をしっかり聞いてくれている」という印象を与えることができます。面接の冒頭に笑顔で本来の質問以外の話題を少しでもしてあげるだけで、緊張している学生は「リラックスさせてくれた」と感じるでしょう。

もし学生時代に力を入れたことを聞く場合には、その中で評価できる活動などがあれば、それを評価する言葉をかけてあげたり、それがビジネスの場でも活かせることならそう伝えてあげることで「自分を受け入れてくれた」「長所を見出してくれた」と思うはずです。

こうして見てくると、何も「新たな面接手法を取り入れる」といったことはしなくても、面接に臨む際の「意識」をほんの少し変えるだけで、就活生に与える好感度は大きく高まることが期待できます。

新卒採用は戦国時代とでもいえる時代に突入してきました。企業規模に関係なく「選ぶためだけの面接」から「選び、選ばれるための面接」へと舵を切っていくことが、優秀な人材の志望意欲を高めて内定辞退を防止するための重要な鍵になってきているのです。

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